2012年12月26日星期三

なぜ、ザックはメンバーを固定する? 2013年も「耐える力」が鍵になる!

なぜ、ザックはメンバーを固定する? 2013年も「耐える力」が鍵になる!
2012年のザックジャパンを振り返ってみると、順調な1年だったと言えるだろう。

 最重要項目であるブラジルW杯最終予選ではスタートダッシュに成功してここまで4勝1分けの勝ち点13。ライバルのオーストラリアが1試合少ないとはいえ、2位以下に勝ち点8差以上をつけているわけだから上出来だ。アジアとの戦いの一方で10月には欧州遠征に出向き、真っ向勝負を挑むことによって世界との距離もある程度測ることができた。チームにとって実のある一年だったように思う。

 続いて選手個々にフォーカスしてみると、ある一字がキーワードとしてパッと頭に浮かんでくる。

 それは「耐」――。辞書を引いてみれば「もちこたえる。たえる」とある。

■離脱期間をあくまで進化を遂げるための時間と捉えた本田圭佑。

 例をあげれば、本田圭佑。

 6月の最終予選3連戦に合わせて合流してきたが、昨年9月に右ひざ半月板の手術を受けたこともあって実に約10カ月ぶりの代表だった。左太腿を打撲した影響もあり、実戦感覚にも乏しかった。

 アルベルト・ザッケローニも不安だったようで、4月の段階では「初戦(対オマーン)に間に合わなくても次に間に合えば呼ぶ」としている。つまり、3連戦で使えるか使えないか、非常に微妙な線だったというわけだ。だが、5月に合流してからは代表フィジカルコーチのアルバレッラを中心に代表スタッフが用意したメニューに必死に取り組み、その効果もあって本田は3連戦で4ゴールを挙げる活躍を見せたのである。

「復活という考えはない。手術したときから新しい本田になる挑戦を始めている」

 本田はこの言葉どおり、裏への飛び出しなど新しい武器を身につけて代表に戻ってきた。復活ではなく、離脱期間をあくまで進化を遂げるための時間と捉えていた。

 彼に言わせれば「耐」の感覚などないのかもしれない。だが、所属するCSKAでは手術から復帰して戻ってみるとまた離脱という、負のスパイラルが彼を襲っていたのは間違いなく、ひざの状態も完璧に戻ったわけでもない。回復過程にあるなかでのこの活躍に「奇跡」という声も挙がったほどだった。

■這い上がるのは当たり前。問題はその先に――。

 ザックジャパンの練習は概ね非公開が多いが、冒頭の15分間は毎度公開される。練習前、個々でアップするなかで彼は一人離れて、ひざを中心に黙々とストレッチをするのが常だ。表情に色はなく、ただただ全神経を注いで心のなかでひざと会話を交わしていたように見える。

 苦境から這い上がってみせるという覚悟、いや、這い上がるのは当たり前でその先に何を自分にもたらせるかという感覚だろうか。「耐」を超越してはいるが、彼が今年、苦境のなかでさらなる成長を遂げてきたことは事実である。

■苦境にもめげず練習に取り組み、歓喜の“復活”を遂げた長谷部誠。

 例をあげれば、長谷部誠。

 彼は今夏、移籍に動いた経緯もあって、フェリックス・マガトから構想外にされて完全に干された。8試合連続のベンチ外という屈辱。しかしそれでも彼はグチひとつこぼすことなくトレーニングに明け暮れたという。

 代表でも試合勘のなさが影響して、らしくないパスミスが多かった。10月の欧州遠征、フランス戦の低調なパフォーマンスに、先発落ちの気配すら漂い始めていた。しかしここで彼は踏ん張った。続くブラジル戦では動きにキレが戻り、ミドルシュートもあれば、守備ではカカからボールを奪い取る場面もあった。本来の長谷部からすればまだまだ物足りないとはいえ、下を向くことなくコンディションをつくってきたからこそ、試合勘が戻ってくればやれるということを証明することができた。

 希望を見出したブラジル戦の後、そのマガトが解任された。ギュンター・ケストナー体制になってから長谷部は先発に復帰。試合に出る喜びに満ち溢れているように見える。それもこれも彼が苦境にめげることなく、前向きに取り組んできた成果だと言える。

■細貝萌が、サブながらザッケローニから厚い信頼を受ける理由。

 例をあげれば、細貝萌。

 彼は本田、長谷部と立場が違って、代表ではサブに置かれている。ザックジャパン立ち上げから参加しながらも、先発で起用されたのは3度しかない。今年に限ると5月23日のアゼルバイジャン戦のみだ。

 サブという「苦境」。しかし細貝という男は、交代して出場すると100%のファイトをする。フランス戦でも流れを変えることに一役買い、ブラジル戦でも相手ボールを奪う役割を果たした(ボールを持ってからの展開に課題はあったが……)。8月のベネズエラ戦から先のオマーン戦まで6試合連続で途中出場中。サブではあるものの、細貝に対するザッケローニの信頼は相当に厚い。

 代表での苦境ばかりでなく、彼はアウクスブルクでの安泰を捨てて今季レンタル元のレバークーゼンに復帰。シーズン序盤こそ出場機会に恵まれなかったものの、今ではサイドバック、ボランチとユーティリティーを発揮して先発の座を勝ち取っている。彼もまた苦境をバネにしてきた一人である。

■森本貴幸は、「もちこたえる」ことができず……。

 ケガ、構想外、サブ……。「耐」は決して簡単なことではない。

「ケガ」一つとってもそうだ。森本貴幸は、アゼルバイジャン戦で先発しながらも腰を痛めて途中交代。幸い軽症だったにもかかわらず、オマーン、ヨルダンの両試合でベンチにも入れなかった。万全とは見なされなかったからだ。森本自身、意気に感じて練習に取り組んでいたのだが、追い込まれたメンタルが逆に腰痛を悪化させた要因になったのかもしれない。

 結局、チームから離脱してオーストラリア遠征に帯同しなかった。それ以降、森本は欧州遠征を含めて一度も代表に招集されていない。あそこでもし焦りに耐えて「もちこたえる」ことが出来ていれば、今なおザックジャパンの常連として名を連ねているはずである。森本の今後の巻き返しに期待したいと思う。

■「若い選手たちは高いクオリティを有効活用できていない」

 ザッケローニのメンバー固定化には、賛否両論というよりもむしろ「否」の声が多いかもしれない。

 だがどうだろうか? 本田にせよ長谷部にせよ、苦境に追い込まれてもここ一番で踏ん張って、その座を明け渡さないのである。他のレギュラーにも同じことが言える。そして控えには、細貝のように高いモチベーションを保ち、耐えてレギュラー獲りを狙っている連中がいるわけである。「チャンスは与えられるものではなく、つかみ取るもの」という観点に立つなら、代表でレギュラーの座を狙いたければ本田、長谷部、細貝たちよりも当然、タフになっていかないと奪えるわけがない。

 11月のオマーン戦に向けたメンバー発表会見でザッケローニはこう言った。

「若い選手たちは皆、高いクオリティーを持っていていい選手がそろっているのだが、(そのクオリティーを)有効活用できていない」

 公の場で選手たちに苦言を呈するタイプではないだけに、ちょっと意外な気がした。ここでは宇佐美貴史らの名前が挙がったが、すべての若手に向けられた言葉であったように感じる。

 君たち相当な気概を持ってやらないと、今の中心メンバーに置いていかれてしまうよ――。

 筆者には、奮起を促す指揮官のそんな声が聞こえた。

■「いったん沈み込まないと、高くジャンプできない」

 ホッフェンハイムの宇佐美やウィガンの宮市などに対する指揮官の期待は、言うまでもなく高い。現在、彼らは出場機会をあまり得られていないが、ここで腐ることなく、何をやるか、何を得るかである。それを本田や長谷部、そして細貝たちが身をもって教えてくれている。壁を乗り越えたことで彼らはまた一歩、成長の階段をのぼったのだから。

 先日、元日本サッカー協会の技術委員長で現在、岡田武史監督のもとで中国・杭州緑城のヘッドコーチを務める小野剛に会った。そのときに教えてもらった岡田の口癖が頭に浮かんだ。

「いったん沈み込まないと、高くジャンプできない」――。

 つまり、高く飛ぼうと思ったら、力を溜めなければならない。ケガ、控え、不調といった負の状況に耐え前に進もうともがくことで、それを高く飛ぶためのエネルギーにするのだ、と。

 ザックジャパンの「耐」というキーワードはきっと2013年も続く。若手に向けられたキーワードとして。

(「日本代表、2014年ブラジルへ」二宮寿朗 = 文)【関連記事】 「ポスト遠藤」と日本サッカーの未来。“最後の黄金世代”を越えて行け!(12/12/17) 【言わせろ!ナンバー】ザックジャパンの2012年を採点する! 【言わせろ!ナンバー】ザックジャパン、この1年で最も“進化”した選手は? ザックの辛辣なコメントに何を思う? 宇佐美貴史20歳が抱く野心と課題。(12/11/10) 「こんなに楽しい試合は久しぶり」惨敗のブラジル戦で本田が見た風景。(12/10/17)

没有评论:

发表评论